Ai4 2025 ラスベガス参加レポートとセッション紹介:AIに関する規制・ガードレールのあり方について

こんにちは、システム開発三部長の上川です。
ここ何年間も、ずーっと「兼」がついていましたが、ついに今年の7月から兼務がなくなりシンプルになりました(笑)
そんなことは、どうでもいいですね。

さて、先日からAi4の参加レポート記事を順次掲載していますが、自分も行ってきましたので、少しご紹介したいと思います。
Ai4の概要については、こちら。
とにかく、セッション数が多い・・・
Ai4は3日間のカンファレンスですが、会場がとても広いホテルでたくさんの部屋で同時に大量のセッションが開催されているので、Full Agenda のページを参照すると、山のようにセッションがあります。
試しにザックリと総セッション数を数えてみたら、
 1日目:約60セッション
 2日目:約210セッション
 3日目:約120セッション
もありました。
たくさんセッションを用意してくれるのはよいのですが、選ぶ方にとってはとても大変です。。
同じ時間に興味のあるセッションがかぶっていたり、セッション間が10分程度しかなくて、移動できるのか?というスケジュールになったり。。
自分は最終的に3日間でKeynoteを含めて30セッションほど参加したのですが、このスケジューリングをするだけで、何時間も使いました。。
でも、時間をかけてでも出発前に参加するセッションをスケジューリングしていった方がいいと思います。
現地ではどんどんセッションが進んでいきますので、「次は何があるんだっけ?」とその場で考えている余裕はないですし、前日にちょこちょこっと見たら選べる量でもないです。

参加セッションサマリ

改めて自分が参加したセッションを振り返りつつ、Ai4のセッションを紹介してみたいと思います。
Ai4のサイトで見ることができるFull Agendaページにあるセッションのフィルタリングの分類と、それぞれに属するセッションの数は以下です
Keynotes 他 45
AI Transformation 116
Industry 58
Job Function 52
Society 24
Mini-Summits 67
Technical 33
この中で自分が参加したセッションの内訳は、
Keynotes 10
AI Transformation 14
Job Function 2
Society 1
Mini-Summits 2
Technical 1
でした。
今回参加した3名の内、自分以外の2名は技術寄りのエンジニアでしたので、テクニカル系のセッションはある程度2名に任せ、自分はそれ以外のユースケースやストラテジー系から、ガバナンス・レギュレーションの話など、なるべく幅広く聞けるようにスケジュールを組んでいます。
テクニカルな部分の記事は、他の2名が書いてくれていますので、ここではそれ以外の部分で印象に残ったところをご紹介しようと思います。

Scaling Responsible GenAI: Embedding Guardrails for Risk, Compliance, and Business Alignment

スピーカーはアメリカのTruist BanKという銀行で生成AIの推進をしている方。
企業が生成AIを全社的に導入する際には、データプライバシーの侵害、コンプライアンス違反、セキュリティリスク、そしてAIの予測不可能な振る舞い(ハルシネーションなど)が大きな障壁となるので「ガードレール」が必要である。
「ガードレール」とは、生成AIの利用方法や振る舞いを定義し、制限するための統制(ガバナンス)メカニズムを指し、これを導入することで、AIが定めるポリシーの範囲内で動作することを保証するもの。
ガードレールの主要な目的
  • リスクの軽減:プロンプトインジェクションや機密データの漏洩などのセキュリティリスクをリアルタイムで検知し、防止する。
  • コンプライアンスの自動化:各国の規制や業界のルールに準拠するよう、AIの出力を自動でフィルタリング・制限する。
  • ビジネスアライメント:AIの応答や行動が、企業のブランドのトーンや倫理的価値観、および社内のポリシーと一致するように統制する。
  • 実装戦略:ガードレールはAIシステムの外付けではなく、最初からAIアーキテクチャに組み込む必要があり、そのためには、既存のID管理システムとの統合や、アクセス制御の設定、継続的な監視システムの確立などが必要。

よくあるガードレールの重要性の話ですが、これをしっかり最初から組み込んで継続的に監視していくことが重要だと話していました。

こちらは複数人が壇上で意見を話し合うパネルディスカッション形式のセッション。
主な内容としては、
  • AI時代の成功の鍵は「人への投資」と「賢い規制」であり、イノベーションを止めないガバナンス戦略が必要である。
  • 現在、あらゆる業界で生成AIの波が押し寄せているが、その未来を左右するのは、技術そのものだけでなく、「それを扱う人」と「それを取り巻くルール」のあり方。
  • (パネリストの方が)様々な経験を通して見えてきたのは、「人に投資することこそ、最も重要なAI戦略である」ということ。
  • そして、その人材がイノベーションを阻害しない賢い規制(ガードレール)を作り上げること。これが、目指すべき道である。
よく分かっていない人が規制を作ってはならない
自分がこのセッションだけでなく、Ai4の各セッションを聞いていてずっと感じていたのは、規制側の立場の人々の意識の違いです。
このセッションでも以下のような話が出ていましたが、
  • ビジネス側の人間であれば、ビジネスの現実を、AI技術者は、技術の可能性と限界を、そして規制側は、その両方を深く理解している必要がある。
  • この知識のギャップを埋めずに作られた規制は、イノベーションの足かせとなり、技術の進歩を遅らせてしまう。
  • つまり、技術とビジネスの現実をよく理解したプロフェッショナルによって、AI活用のレギュレーションは作られるべきで、それには「人への投資」が重要なファクターとなる。
Ai4のスピーカーの方は誰もが、あくまで目的は「安全確保(ガードレール)」であり、「規制する」こと自体に価値があると考えている人はいませんでした。
例え規制側の人間であったとしても、彼らのミッションは、
「いかにイノベーションを阻害せずに、有効に安全を確保できるか?」
と考えていて、規制だけをする仕事には価値がないことを深く理解し、いかに有効なガードレールを構築できるかに知恵を絞っています。
誰もが、AIの発展に制限をかけようとするのではなく、安全を確保する基準を用意することで、企業が安心してAIを活用し、イノベーションを起こせる環境を整えようという姿勢だったのがとても印象的でした。
とてもアメリカらしい前向きな考え方だと思いましたが、これはどんどん見習っていくべきで、我々もまだまだプロフェッショナルと言えるほどAIに関する知識や経験は持っていないので、もっともっとアンテナを広げていかないといけないな、と強く感じます。

Ai4旅行記記事はこちら

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Ai4とは?という方はこちら

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上川 和樹システム開発三部長