World Summit AI 2025 Amsterdam参加レポート:デジタル主権の確保、AIと地政学リスクについて

こんにちは、システム開発三部長の上川です。

8月のAi4に引き続き、今の世界のAI動向を知ることを目的として、10月にアムステルダムで開催された、World Summit AI 2025 に参加してきました。

World Summit AI についてはこちらの記事で紹介しています。

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Ai4はラスベガス開催ということで、アメリカらしくかなり前のめりなセッションが多かった印象ですが、ヨーロッパで開催されるカンファレンスではまた違った角度のセッションが聞けるのだろうか、という視点を持って参加してきました。

そんな観点で、特に印象に残ったセッションのテーマと概要をレポートします。

今回も数名のエンジニアと一緒に参加してきており、技術的な観点からのレポートはエンジニアメンバーに任せ、自分はAIに対する考え方や施策、方針といった部分にフォーカスして見てきましたので、そのあたりの内容をご紹介します。

技術的なレポートはエンジニアメンバーからポストされていきますので、そちらもお楽しみに。

Powering Europe's AI future: Public funding for strategic AI projects and gigafactories

このセッションでは、欧州におけるAIの将来的な発展を加速させるための戦略と、公的資金の役割について説明されていて、以下のような理由から、欧州内でデジタル主権を確立する必要があり、それには官と民の連携が不可欠であるという話をしていました。

デジタル主権と自律性の確保

欧州では、アメリカや中国の巨大テック企業が提供するクラウドインフラやAI計算能力に全面的に依存する状況を、地政学的リスクの観点から問題視している。

デジタル主権とは、単にデータがどこに保存されているかだけでなく「誰がデータを管理・統制するのか」という支配権の問題であり、このコントロール権を確保する必要がある。

地政学的な緊張が高まる中で、自国内(EU圏内)に計算資源(AIインフラやデータセンター)を確保することは、サプライチェーンの寸断や安全保障上のリスクに備えるために不可欠である。

安全保障とレジリエンス

アメリカや中国ではなく、EU圏内にデータセンター(データ処理能力)を構築する理由は、主にデータの管理と欧州の競争力にある。

欧州企業は、GDPR(General Data Protection Regulation)などの厳格なデータ保護・プライバシー保護の規制に縛られているので、公共データや機密データをEU圏内の環境で管理することで、これらの法規制に完全に準拠し、外国の法律によるデータアクセス要求から保護することができる。

AIが世界中の経済を再構築する中で、その基盤となるデータセンターは、単なる保管場所ではなく、経済成長のエンジンになると見なされていて、欧州の競争力強化のためには、この高性能でセキュアなインフラを自国内でスケールアップすることが不可欠だ。

公的資金の戦略的な役割

欧州は、この巨大なインフラ投資を加速させるために公的資金を戦略的に活用しようとしている。

AIインフラ構築は巨額の初期投資とリスクを伴うので、公的資金はその初期段階のリスクを軽減し、大規模な民間投資を呼び込むためのきっかけとして機能する。

これらは、欧州共通の利益となる重要プロジェクト(IPCEI: Important Projects of Common European Interest)といった特別な枠組みを通じて、戦略的に重要な基盤技術への大規模な資金投入と加盟国間の協力を進めていて、最終的には、研究や技術移転、そして産業化を一貫して行う、持続可能なAIエコシステムの構築を目的としている。

AIのイニシアチブに対する欧州の危機感

上で紹介したセッションが一番印象に残ったものではありますが、この「AIに関する主権確保」という観点は、他にもたくさんのセッションで言及されていました。

例えば、初日の全体セッションの中にあった「Empire of AI: How Silicon Valley is reshaping the world」というセッションの中でも、AIの開発に必要な3つの主要な要素(資金力、計算能力/チップ、人材)が、米国の巨大テック企業に圧倒的に集中していて、これらの企業が、世界中のユーザーデータを収集・処理することで、AIモデルの学習を進め、そのAIが世界中の経済活動や情報、さらには意思決定プロセスを支配し始めている、という警鐘を鳴らしており、

この結果起こることとして、

  • 各国がAIを活用しようとする際に、その基盤となる技術が外資系の少数の企業に依存してしまい、技術的な選択肢と行動の自由が制限される
  • AIモデルは訓練されたデータと開発者の価値観を反映するので、米国中心のAIモデルが広く使われることで、欧州独自の倫理、プライバシー、文化的価値観が、技術を通じて薄められる
  • 欧州企業がAIを活用してイノベーションを起こそうとしても、そのAIの基盤やその利益がシリコンバレーに留まってしまい、欧州経済に還元されないという懸念がある

といったリスクを説明しています。

このリスクを回避(他国に依存しない能力を確保)するためにも、欧州自前のAIチップやデータセンターへの投資が必要だ、と言っていました。

これらのセッションを聞いた感想

日本ではまだAIを活用する文化そのものを醸成している段階であり、

  • AIイニシアチブをリードする米国や中国
  • これらの国に先行、独占されていきそうな状態であることに危機感を感じている欧州

のさらに後続にいるのが日本の現在地なのかな、と思います。

日本は新しいことを始めるのは苦手ですが、追いついて追い越していくのは得意な国なので、我々もこれからどんどん吸収していかないとですね。

以上、World Summit AI 2025のセッション紹介でした。

引き続き、他のメンバーのレポートもご期待ください。

World Summit AI旅行記記事はこちら

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World Summit AIとは?という方はこちら

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上川 和樹システム開発三部長